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共謀罪法案【きょうぼうざいほうあん】】

★繰り返される法案提出に潜むねらい


 犯罪計画を話し合っただけで罪になる「共謀罪」がその名称を変えて2017年通常国会に上程されようとしている。


 報道によれば16年の8月26日、菅義偉官房長官が記者会見で、20年東京五輪を見据えたテロ対策強化の一環だとして、共謀罪の趣旨を盛り込んだ「テロ等組織犯罪準備罪」の創設を目指すと言明。 当初は秋の臨時国会に提出するもくろみであったが、年明けの通常国会で成立させるという。


 共謀罪は03年来、国会に三度上程されたが、野党、日弁連、メディア、市民運動など反対の広がりで廃案となった経緯がある。


 共謀罪とは何か。そもそもは国連組織犯罪防止条約を批准するための国内法整備として提案されたもので、日本政府は2000年に同条約に署名。02年に共謀罪規定の新設を含む新法案が法制審議会に出された。 しかしこの条約は「金銭・物質的利害」目的のマフィアや暴力団対策であり、「思想・政治」目的のテロ等は入っていない。ところが国会に提出された法案には、2人以上で話し合っただけで罪にする団体の活動として実に619もの犯罪が挙げられた。


 具体例を挙げよう。例えば原発立地や米軍基地建設に反対している団体が、会議で「明日は道路に座り込み車など並べて搬入を阻止しよう」と「謀議」したら威力業務妨害罪の共謀行為となる。 あるいは、ある市民運動団体が戦争に反対するステッカーを公共物などに貼り付けることを計画。謀議を経て準備のためにATMから出金したことで建造物損壊罪の共謀行為となる。さらに詐欺、窃盗、傷害、組織的強要なども、社会運動や政治活動、取材などに抵触する可能性が、捜査当局の判断で十分あり得るというわけである。


 日弁連は、「『共謀罪法案』の本質的危険性は、犯罪が成立する要件のレベルを大幅に引き下げ、どのような行為が犯罪として取締りの対象であるかをあいまいにし、国家が市民の心の中にまで監視の目を光らせ、 犯罪構成要件の人権保障機能を破壊してしまう」(共謀罪対策本部副本部長・海渡雄一)と、その危険性を指摘した。当時、与党の中からも慎重論が相次ぎ、法案は廃案となった。


 近代刑法の原則をも突き崩すような法案がなぜいま、再浮上しつつあるのか。政府は、「テロ行為などの重大犯罪」が対象で、適用対象も「組織的犯罪集団」として市民運動などは無関係だとしている。 しかしかつて国会前の抗議行動を「テロ行為」に等しいとの自民党幹事長(当時)の発言もあった。沖縄の反基地闘争を国策に対する妨害行為だとして全国の機動隊を動員して排除・規制している状況などを考えれば、無関係ですまされまい。

 そして重要なことは、共謀行為を立証するためには、盗聴や密告などが不可欠であることだ。16年通常国会で成立した盗聴法(通信傍受法)の改訂による範囲と警察権限の大幅拡大は、共謀罪を補完する意味で大きな武器とされることは間違いない。



文・沢田竜夫(『「治安国家」拒否宣言』著者)  2016.9.15