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保守傍流【ほしゅぼうりゅう】

★アメリカの後ろ盾で主導権を握った保守傍流


 国対政治というのは、実は55年体制という二重の連立体制の深層部分、つまり自民党左派と社会党右派の水面下の連携をまた別の側面から見たものでした。ちなみに、表層の連立は自民党左派=保守本流と自民党右派=保守傍流の連立としての自民党そのものです。保守傍流は、今でこそ権力独占の状態にありますが、その名が示すよう、元は少数派でした。この保守傍流が保守本流と手を組んだ理由は、左右社会党の合流や、財界の要請、アメリカの指示など様々な事情がありますが、独力で政権を取る実力はなかったという内輪の事情もありました。逆に言えば、保守本流の集票力に乗る形でしか、政権党にはなれなかったということです。そして、保守本流の集票力を支えていたのは、その利益分配の経済政策でした。


 しかし、小選挙区制が自民党の勝利を保証するようになると、保守本流の影響力は低下し、利益分配の原資を稼ぐ必要もなくなりました。さらに、政権の後ろ盾であるアメリカへの上納金が、たとえば消費税のような形で国民所得から天引きされるようになると、経済政策の合理性は事実上不可能なものとして放棄され、赤字補填のための負担の押し付け合いが政策課題の表層に浮かび上がりました。


 この過程で、自民党の票田は農村部から高齢者へとステルス的にシフトしていきました。農村ほど高齢化が進んでいるため、このシフトは見えにくいのですが、合理化圧力を強める農政や福祉維持を口実とした消費増税からは、農村冷遇・高齢者優遇の構図がはっきり見て取れます。高齢者は、人口比と投票率で決まる有効投票人口内比率で最大の層なので、この層さえ取り込めば選挙は安泰です。そしてこの層の最大の関心・不安は自分たちが生きている間に福祉が破綻しないかであり、それさえ保証されれば手段は問題になりません。


 国民経済に二重三重の負担を強いる消費増税は典型ですが、このような合理性を欠く、つまり分配の原資を減らす政策ですら容認されてしまうのは、それが福祉を維持するための唯一の手段であるとのプロパガンダが高齢者に対して効いているためです。「消費税上げます」のメッセージは、現在のメインターゲットの高齢者にだけは、「年金・医療・介護を守ります」のメッセージに自動変換されて届きます。現実には、高福祉政策の破綻はむしろ早まることになりますが、残念ながら高齢者は政策の合理性を判断しうるだけのリテラシーを持ち合わせていません。


 当面、高齢者の支持を確保するには、テレビを中心とする既存メディアを押さえるだけで十分です。そしてそのコストは、かつての手厚い利益誘導に比べてはるかに少なく済みます。



文・土屋彰久(政治学)   2018.7.11