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自民党の構造変化【じみんとうのこうぞうへんか】

★自民党左派(保守本流)と自民党右派(保守傍流)という連立


 自民党政治の構造変化は、見た目より深いところで進行しています。かつて保守本流主導で展開された国対政治は、高度成長期の日本経済が生み出す富の分配に重なっていました。都市-工業部門の収益構造を守りつつ、そこから生じる余剰利益を地方-農業部門に再分配する。これを支えたのが、軽武装-経済重視の保守本流路線でした。国民経済にとって負担にしかならない軍事費を抑制できれば、生産性・国際競争力は向上します。アメリカの軍事強化の要求をかわし続ける上で、9条と護憲野党の存在は格好の口実でした。こうして確保された収益は、福祉政策にも回され、中・低所得層の経済的不満を和らげることになり、経済成長による全体的な生活水準の向上も手伝って、中間層の保守化を進めました。



 国対政治の文脈では、この福祉政策は、野党の水面下での協力への見返りという意味合いもありましたが、政権支持の安定化という意味で、より多くの見返りを得たのは自民党でした。


 ところが、様々な要因により、この構造が揺らいでいきます。石油ショックに始まる輸入原材料価格の大幅な値上がり、地方への利益分配・利権開発システムとして機能していた公共事業の非効率化、高齢化の進行や医療技術の進歩による福祉支出の増加、開発途上国の工業化などが主たる要因でした。こうして分配の原資は減り続け、赤字に転落していきます。しばらくの間は、この赤字をまず建設国債でごまかし、公共事業を拡大しましたが、非効率化の進行した公共投資を拡大すれば赤字は潜在的に拡大し、やがてごまかしが利かなくなり、赤字国債が常態化するに至りました。


 この状況に慌てたのは、アメリカでした。アメリカは日本に貿易赤字を打ち消す形でアメリカ国債を押しつけ、日本はそれを決して売らないという暗黙の了解の下、緩和的金融政策の資金としていました。この日本が財政破綻してしまうと、この水面下のリンケージ(財政破綻→アメリカ国債放出→ドル暴落)が発動し、アメリカの方が困ったことになってしまうからです。アメリカ国債の4割(ダントツ1位)を引き受けていた日本が売り手に回ったらどうなるか、想像は容易につきますね。そこでアメリカは、日本に行財政改革を迫ることとなりました。


 自民党の保守本流はこれに抵抗しました。なぜなら、地方農村部に基盤を置くその集票構造は行財政支出に支えられていたからです。行財政改革を進めると、選挙に勝てない。選挙に負けたら、アメリカの意向も通らなくなるぞと開き直りました。これは、9条を口実に軍事支出の増額を渋った時と同じです。でも、アメリカは先回りして答えを用意していました。小選挙区制にすれば、無駄な金を使わなくても選挙に勝てるだろうと。こうして、以前ほど金を使わなくても自民党が選挙に勝てる小選挙区制が導入され、保守本流の独壇場だった利権エンジンで回る選挙スタイルへの依存度が下がり、アメリカ・イエスマンの保守傍流が、アメリカの後ろ盾で主導権をがっちり握れるようになりました。




文・土屋彰久(政治学) 2018.7.11